おーさみしもー! その2

"映画"が19世紀、工業化時代の技術革新の一つの結果であるなら、"工場"はより直接的に、その時代それ自体を表現しています。

そして『工場の出口』の映像に姿をとどめた"工場から出てくる人々"こそ、工業化の発展によって創出された人々、つまり労働者・大衆なのでした。

おそらく彼らこそが、来たるべき20世紀に大衆娯楽の王者たる"映画"の主たる観客となり、担い手となって行くのです。

この映像で見られる人々は、そのまま見る人々に変わり得るのです。

映画史家サドゥールの伝えるリュミエール時代のエピソードでは、こんなことが伝えられています。

「カメラマンたちは、人通りの激しい四つ辻に数時間もカメラを据えつけて、フィルムを装填していないカメラのハンドルを廻し続けた。

夕方になると、自分たちが写されていると信じこんだ野次馬たちが、スクリーン上で自分の姿が見られると思って映画館に押しかけた」


『工場の出口』という"最初の映画"は、大衆という"映画"の社会的存立基盤を二重の意味で表現しています。

このような"映画"の存立基盤は、同様に20世紀を風靡したコミュニズムとも共通する以上、両者の消長がほぼ同時的に推移したのは、偶然といえるでしょうか。

レーニンは映画の宣伝・教化機能にいち早く着目していましたといいますが、"ハリウッド帝国主義"とスターリニズム支配とは、共時的に相呼応する歴史的現象として考察すべき主題ではないでしょうか。

フルシチョフによるスターリン批判は56年、フランスでヌーヴェル・ヴァーグが始動するのが58年。

コミュニズムが相対化された現在、映画もまた同じ運命を辿るのでしょうか。

"最初の映画"が"映画の最後"すら予感させるのは、人間の営みの必然なのでしょう。

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